もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

読書

読書日記 2023/12/1-12/13

ジョルジュ・シフラ「ジョルジュ・シフラ回想録」 超絶技巧で名高いピアニスト、ジョルジュ・シフラの回想録。シフラもまた時代に翻弄された人だった。極貧と戦争に関する記述が大半を占め、「ピアノに腰かける青年」の姿はほとんど見られない。華やかなヴィ…

どこで本を読むか?

どこで本を読むか、自分なりの感想をあれこれまとめてみた。 自宅 家族がうるさい。誘惑が多い(パソコンでやりたい作業があるなど)。 外出しないので本を持ち運ぶ手間が無く、家族がいないときは最適。 カフェ・喫茶店 良い感じの雰囲気だと良好。適度なノ…

感想「コンビニ人間」

小説はあまり読まないのだけど、今さら「コンビニ人間」を読んだ。面白かった。ただ、どう面白かったかと聞かれるとうまく考えがまとまらず、むしろ他の人の感想を読むことで自分の感想が浮かび上がってきたような気がする。以下、個人の感想、一人読書会。 …

トリイ・ヘイデン「うそをつく子」

トリイ・ヘイデンの「うそをつく子」を読んだ。息をするように嘘をつき、さまざまな問題を引き起こす女の子の物語。家族に馴染めず、里親の家庭でも問題を引き起こして、すぐに施設へと帰される。誰もが彼女の虚言癖にうんざりして、半ば彼女を見捨ててしま…

「ママがもうこの世界にいなくても」

「ママがもうこの世界にいなくても」を読んだ。若くして大腸がんになった女性の日記……と説明するのはたやすいのだけど、やっぱりこういう本は「打ちのめされるようなすごい本」だ。 私は遠藤和のどかさんの生き様を胸に刻んだ。幼いころ、周りの人がみんな「…

スティーヴン・ギャロウェイ「サラエボのチェリスト」

小説はあまり読まないのだが、ときに小説は生きる力を与えてくれることもある。今日読んだ「サラエボのチェリスト」も、私にとってはそうだった。 戦火に包まれたサラエボで自らの危険を顧みず演奏を続けたチェリストと、そのチェリストの演奏に心打たれた3…

ロベルト・ゼーターラー「ある一生」

ロベルト・ゼーターラー「ある一生」を読んだ。最近の私は、人が生きて死ぬことや、老いることを含めて、「生きること(どう生きるか、なぜ生きるか)」についてどう考えるかということに関心があって、その周辺の本をたまに読んでいる。この本も、その一つ…

「交通事故はなぜなくならないか」

いつも(というほど書いてないが)の誤読メモ。 自動車の交通事故について、リスク・ホメオスタシス理論 (Risk Homeostasis Theory : RHT) という考え方があるという。誇張して言えば、安全対策をしても、そのぶんだけ人びとは油断して危険な行動をとるから、…

『必笑小咄のテクニック』という本のこと

ふと『必笑小咄のテクニック』という本のことを思い返していた。ジョークであれば笑いの源泉となるふざけた論理が、ひとたび現実に持ち込まれると人びとを欺く笑えないものとなる。著者の米原万里さんは、ジョークをあざやかに分析しながらも、社会に対する…

「眠っているとき、脳では凄いことが起きている」

面白かったので思い出しながら羅列してみる。睡眠(とくにレム睡眠)時の脳活動、そしてその産物でもある夢。これは人間にとってどんな意味があるんだろう? 結局よく分からない部分もあるのだけど、分かってきた部分もあるらしい。以前テレビで見て知ったか…

「フランダースの犬」を読みました

フランダースの犬を読んだら、けっこう印象が変わった。アニメ版で、ネロがパトラッシュとともに安らかに息を引き取る場面はあまりにも有名だ。だけれど、わたしはそこしか知らなかった。物語についても、漠然と「善良な少年が村の人々からいじめられて死ん…

「イワン・イリッチの死」

「イワン・イリッチの死」を読んだ。やはり有名な本だけあって、読後「あぁ~~」となった(語彙力)。 イワン・イリッチは社会的に見ればかなり成功していた人物といえる。官吏としての役割をまっとうしながら、快適な人生を作り上げてゆく。ところが、突然…

首をはねろ!

この本を図書館で見つけてピンときました。まず「首をはねろ!」という衝撃的なタイトルで驚き、メルヘンと暴力という意外な副題に興味をそそられました。そうして読んでみると、メルヘンの暴力からいつになっても変わることのない人間のさがを解き明かして…

必笑小咄のテクニック

小咄の分析に隠された社会への警鐘――笑えるのにハッとさせられる本 米原万里さんの書評を読むと、こういう読み方がしたいなと思わずにはいられません。小説から政治的なノンフィクションまで、ジャンルを問わずこんなに本を楽しんでいる人がおられたとは。楽…

読書嫌いに薦めたい本

読書嫌い プレゼントしたい本――わたしと同じ読書嫌いの人にプレゼントするとしたらどんな本だろうか、と考えたことがある。「わたしと同じ読書嫌い」というのは、「趣味は読書です」と言われたときに、どこかで劣等感というか嫉妬心というか、後ろめたいもの…

「厭書家(えんしょか)」

「厭書家(えんしょか)」という言葉を目にして、「おっ、仲間か」と勝手に思ったのだけど、まったく違った。この「厭書家」というのは、本を愛しているからこそ、すべての本を読むことのできない自分の非力さを嘆いて言っているらしい。だから本棚にある「…

墓場のような図書館

どうも近所の図書館が勉強をする人ばかりで面白くない。勉強が悪いというのではなくて、空間として面白くない。これでは図書館を訪れる子どもたちも、本に対して嫌なイメージを抱いてしまうのではなかろうか、と思います。新しい図書館をつくるなら、その点…

必笑小咄のテクニック

ネガティブな感情をやめよう、ポジティブになろう、なんて、決してできないと思う。ネガティブな感情だってわたしの一部なのだ。だから、ネガティブな感情と上手く付き合うことは、生活する上でとても大切なことだとわたしは思う。 その方法の一つとして、わ…

パウゼヴァング『片手の郵便配達人』

グードルン・パウゼヴァングの『片手の郵便配達人』を読んでみた。 第二次世界大戦の終戦近い1944年8月から物語は始まる。かつて生粋の愛国少年だったヨハンは戦地で左手を失い、17歳になった今は故郷のヴォルフェンタン地方で郵便配達人として村々を巡り歩…

パーネ・アモーレ

田丸公美子さんの『パーネ・アモーレ』を読んでみた。きっかけはおそらく少なからぬ人たちと同じ、米原万里さんの『打ちのめされるようなすごい本』でこの本が取り上げられていたからだ。その紹介によれば、この本の筆者はほかに並ぶ人のいないイタリア語通…

アンダーソン『脳波』

もしもすべての人間の頭がよくなったら、世界はどうなるんだろう、と漠然と考えたりする。戦争の非効率に気がつく? あるいは、戦争の裏でソロバンをはじく? 楽観的、悲観的な未来像のどちらを思い描くこともできる。 アンダーソン*1の『脳波』は、まさにそ…

本を読み書評を書くこと

アドラーとドーレンの『本を読む本』を読んだので、感想も兼ねて「本を読み書評を書くこと」について考えてみたいと思う。 本を読む本 なぜ本を読むのか。先日もちょっと書いたけれど、読書家ではないにしても本を読む人なら避けては通れない問題だと思う。…

僕の好きな本 (2)

その1から続き。 文章が好き 第三に、文章が好きであることだ。さらに言えば書き手その人が好きだということ。これは自分が楽しいと思うかどうかということに尽きる。小説を好む人に一番多そうな理由なのだけど、自分の場合にはエッセイに一番多い。そもそも…

僕の好きな本 (1)

良書という言葉があるけれど、良い書とはなんだろうかと思った。そこで、自分にとって良い本とはなにかということについて、本を簡単に取り上げながら書いてみようと思う。それは「読書かくあるべし」というような話ではまったくない。むしろそういう模範的…

門松秀樹『明治維新と幕臣』

中公新書の『明治維新と幕臣』を読みました。間違いもあるかもしれませんが、もの知らずの感想文(書評ではない)ということでご容赦ください。 幕府と明治政府の連続性 「明治維新によって幕府は滅びた」と習った記憶が僕にはあるのですが、他方で「じゃあ…

渋沢栄一『雨夜譚』

渋沢栄一の『雨夜譚』を読みました。渋沢栄一といえば、日本銀行、第一国立銀行の創立に深く関わり、その他金融、保険、交通・通信、紡績といった分野で500近い会社の設立に関わったといわれています。その実業家としての一面も興味深いのですが、本書で語ら…

紋切型辞典

誰もが言うような言い回しをまとめると、とっても陳腐でおまぬけ。けれど、みんな言うんだから「けしからん本だ!」ということもできない。そんなところを楽しむ本かなと思います。以下、気になったところを記録しておきます。 アカデミー・フランセーズ [Ac…

黒木奈々『未来のことは未来の私にまかせよう』

黒木奈々さんの『未来のことは未来の私にまかせよう』を読みました。 黒木奈々さんは、NHKのワールドウェーブトゥナイトを3年間、また国際報道2014、そして2015年が明けてからは国際報道2015でキャスターとして復帰なさっていました。本書は国際報道2014を休…

日本の最も美しい図書館

個性あふれる41の図書館。そのどれもがデザインや機能という点で固有の美しさを持っています。未来的な建物や歴史な趣のある建物、あるいは図書館の在り方そのものを問い直すようなまったく新しい図書館。こんな図書館を無料で使ってよいのかと思うほどです…

「ピアノ・ノート」

チャールズ・ローゼン「ピアノ・ノート」 世界的なピアニストが、ピアノという楽器と演奏という行為について自論を語る。いわば、ピアニストの奥義を垣間見ることのできるエッセイだと思います。ピアノを弾くとはどういうことなのか。ピアニストはあまりに弾…