もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

2/20 ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル

 2/20 ミューザ川崎で「ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル」を聴く。マズルカがメインで、最後に変ロ短調ソナタ2番。ショパンの作品の中で、マズルカほど演奏者によって違いの生じるジャンルは無いと思う。アクセントはもちろんのこと、テンポ自体も大きく揺らぐのが醍醐味で、それが好みの大きく分かれる理由でもある。

 私は品評するほどの見識はないけれど、マズルカは「端正だな」という印象を受けた。ルバートやアクセントもそうだけれど、奇抜さは無い。けれど、自由に歌う右手が印象的だった。装飾音だけではなくて、一瞬の溜め方や間が素晴らしかった。一言で言えば、真っ当というか。ショパンへの敬意や作品に対する誠実さがすごく伝わってきた。イ短調の序奏の孤独感とか、どうやったらあんなに表現出来るんだろうな。

 マズルカで一つ面白かったのは、マズルカの曲集がアタッカで奏されることによる効果。アタッカというか本当に食い気味だったのだけど、繋がりが分からなくなるくらい自然だった。

 多くの人が指摘するように、ソナタに入る前に拍手が入ったのは残念だった。さらに言えば、前半の終わり拍手が入らず、ブレハッチがおどけて慌てて立ち上がる素振りをしたのもヒヤッとした。広い意味で言えば、聴衆と奏者のちょっとした齟齬で、それがソナタ2番の冒頭部にも繋がってしまったのかな……と、余計な感想を抱いてしまう。

 けれど、それでもソナタはやはり素晴らしい作品で、ブレハッチの演奏はその魅力を存分に伝えてくれたと思う。一楽章はショパンのピアノにはないオクターブ低いbで、ダイナミックに締めくくる。二楽章のスケルツォや四楽章のフィナーレはとにかくテクニカルで、先の件もあって十全なコンディションでは無かったのかもしれないけれど、マズルカとは全く違う、ショパンの叫びにも近い声がしっかり感じられた。三楽章のカンタービレはやはりこのソナタの白眉。聴衆もこの部分での咳は死ぬ気で堪えて欲しかったなぁ。ちなみに、一楽章の繰り返しは従来通り5小節目からだった。

 アンコールは「英雄」、マズルカ op. 6-2, 「軍隊」。「英雄」のあの序奏からして、聴衆が盛り上がらないわけがない。当然の大喝采。私はop. 40 と言うとショパンが「全世界に向けて」と書いていたのを常に思い出す(全書簡)。ああ、やっぱりポロネーズはいいな! ショパンはいいな! と熱い気持ちで会場を後にした。