2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧
もしも、目の前を並んで歩く二人が道を譲ってくれなかったら。ふつうなら「すみません」と言えば片付く話だけど、言い出せないこともある。あまりに楽しげに話していて、僕が割り込むのが申し訳ないような気がしてしまう。咳き込んで気がついてもらうという…
ゆずってもらってだまってすわってでんしゃはことことおくちはちゅばちゅば小さな入れ歯が 涼しげに鳴った「あたしのほうが年上だからねえ」
鶏鳴が暁を告げると、965階の一室へと入り込む――類いまれな美貌を持つ男はベッドを振り返る。「疲れただろう、コーヒーでも入れるよ」類いまれな美貌を持つ女は言う。「ええ」幸せに満たされた男は、コーヒーを入れ始めた。彼女のために、たっぷりと愛を込め…
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは一日じゅうテレビを独占し、おばあさんはストレスのあまりお遍路に出かけてゆきました。めでたしめでたし。
「ご苦労様でした」「ご苦労様でしたとはなんだ! 日本語を勉強しなさい!」「お疲れ様でした」「お疲れ様でしたとはなんだ! 目上の人間を労おうというのか!」「では、お先に失礼致します」「”致します”とはなんだ! 伺いを立てるのが筋だろ!」…………彼は正…
小学1年生のときだった。担任の先生が風邪で休んでいて、時限ごとにほかの学級から先生が入れ替わりでやってきた。その時限は3年を担当している先生が来ていた。何の科目だったのかはさっぱり覚えていないけれど、上級生を担当している先生というのはそれだ…
中公新書の『明治維新と幕臣』を読みました。間違いもあるかもしれませんが、もの知らずの感想文(書評ではない)ということでご容赦ください。 幕府と明治政府の連続性 「明治維新によって幕府は滅びた」と習った記憶が僕にはあるのですが、他方で「じゃあ…
<女神さま> あなたに寄りかかってきたのは、この金のおっさんですか? それとも、この銀のおっさんですか?<ある女性> いいえ、女神さま、わたしに寄りかかってきたのは、ごく普通の、寝たふりをした、せこいおっさんです。<女神さま> まあ、あなたは…
今週のお題「給食」 給食といえば少なくとも年間200回は食べるものだから、思い出もそれだけあって当然だろう。けれどいま思い返してみると、僕にとって給食とは競争そのものだった。牛乳や食べもののおかわりをめぐる競争、これが一番思い出に残っている。 …
彼の楽しみは、ホームセンターで買ってきたかいわれ大根が太陽に向かってゆっくりとおじぎするのを見守ることだけだった。彼らがようやくおじぎを済ませると、こんどは向きを変えて反対におじぎをさせる。彼らが2度の挨拶を済ませると、彼の一日がちょうど終…