もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

エレベーターに誰もいない瞬間における奇行について

 ある記事いわく。エレベーターに乗って誰もいない瞬間に、肩回しスクワットをしたり、鏡に向かって口角を引き上げて笑顔の練習をしたり、防犯カメラに向かって手を振ったり、他のフロアのボタンを全押ししたあげく全力で閉ボタンを2回押して消すなどしている人がいるらしい。おもしろいことだ。わたしが見られるにもかかわらず見ていない世界では、このようなことが起こっているのだ。そしてわたし自身もまた、そのような世界に生きる人間でもある。

 わたしはふだん社会性というお面をつけて生きているに過ぎない。そして社会のなかでバレないようにこの社会性というお面を外す遊びをしているのだ。比喩的に露出狂と言えなくもないが、露出狂と違って、その社会性をはぎ取った瞬間(=露出)を誰かに見られてはいけないという固い掟がある。それは非社会的な行動ではあるが、「反社会的な行動」ではない。それでは交番のお世話になってしまう。

 たとえば目の前を人が歩いていても、その人がわたしを見ていなければわたしは顔面の筋肉のストレッチをおこなう(お気に入りでよく真似する顔があるので最後に掲載しておく)。あるいは、打ち込んでいる曲などを歌い出す。リズムに乗って左手をぴょんぴょん跳ねるように動かしたりする。見つかったら危ない奴と思われるに違いない。だが見つからないところでこれをやる。

 いわば、万人を相手に「だるまさんがころんだ」をしているようなものだ。社会的に振る舞いつつ、いかにお面を外す時間を多くできるか。この世界はそういうゲームなのだ。見つかったが最後、わたしは「変な人」というレッテルを貼られる。だが、いまのところそうしたことにはなっていないと思う。おそらくエレベーター内で変顔をする(先の記事にあったように)のは警備の人にバレていると思うが、同じ人がたくさん居るらしいので安心した。だがわたしは人が居ても後ろでやる。アピールしたりはしない。粛々と口角の筋肉と目尻の筋肉のトレーニングを行う。

 またこの時期はマスクをつけている人も多い。マスクの下で変顔をしている人も居るらしい。朝の通勤時間帯、けだるい顔をしている人もマスクの下で大口を開けて我々に向かって牙を剥いているかもしれない。恐ろしいことだ。だが、バレることのない安全圏だからこそ安心してそのようなことが出来るのだろう。エレベーターという密室にしてもそうである。 そこからあえてリスクの世界に飛び出すのは、やはり変な人としか言いようがない。

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わたしがよくやる顔。ばぶ~(門脇「子どもの社会力」、岩波新書で紹介されている古典的な研究。雑な引用で申し訳ない)