もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「今だから話せること」

特別お題「今だから話せること

 

 いまだに誰にも言えないのは、初めて女の子を押し倒したときの記憶だ。いい年をして、それ以上の喜びや悲しみも感じてきたというのに、一番ショックだったのはその時の記憶だ。今でも誰にも言えないし、こうして書くだけで未だに心の傷が痛む。今、私はその痛みに歯を食いしばりながらこれを書いている。

 誤解のないように断っておくと、それは決して合意の無かったことではなかった。ただ単に、そういう雰囲気になって、そういうことが起きて、それ以上のことにはならなかった、というだけのことだ。当時私は高校一年生で、場所はその女の子の家だった。そのときの感触もいまだに覚えている。まあ他人からすれば、ごくありふれた、クライマックスのない、どうでもいい話だ。

 それでも私の心がなぜこんなに痛むのかと言えば、それが私が初めて心の衝動に突き動かされた体験だったからだ。してはいけないことをしてしまった。相手の気持ちを考えずに、一方的に行動してしまった。自分の動物性に気がついてしまった恥ずかしさがあった。

 結局、その女の子とはそれ以上にはならず、気まずくなったというわけでもないけれど、別々の学校に行っていたというのもあって4年ほどは連絡をとらなかった。再会したのは成人式で、会場の出口で委員をしていた彼女に会い、二三言葉を交わして別れた(いくつもある出口で、たまたま私の近かった出口に彼女が居たというのも、運の良いことだったが)。当時はLineなど無かったから、メールアドレスを伝えて、「今度ご飯でも行こう」と連絡が来て、私も返事をした気がするのだけど、それっきりうやむやになってしまった。お互いに大学が忙しくなってしまったのだろう。

 まあ今では、そういう経験も重ねて大人になってゆくのだろう、と客観的に傍観できるけれど、それでも当時の恥ずかしさや胸の痛みというのはそのまま残っていて、私に思い出を傍観することを許さない。ああ恥ずかしい。