もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

蜘蛛や昆虫との対話

 蜘蛛を外に逃がすときの、心が通じたような嬉しさ。蜘蛛の進路を先読みして、うちわでそっと待ち受ける。そこに蜘蛛がちょんと乗ったら、「動かないでね」と念じる。いい子だいい子だ、と心のなかでつぶやきながら、そっと外に出る。そうして地面にうちわを近づけると、蜘蛛はちょんと跳ねて降りる。元気でね……と見送るとき、私は自分がいかに傲慢な存在であるかを自覚する。そして、家から出ていってくれという一方的な願いにも関わらず、大人しく聞いてくれるこの蜘蛛に、私は心から感謝する。

 もちろん蜘蛛からしても迷い込んだだけであって、居心地の良い場所ではないのかもしれないけれど、なんだか心が通じたような気がしてしまうから不思議だ。反対に、空を飛ぶ昆虫の類いはダメだ。捕獲して無理やり外に出すか、さもなくば殺してしまうしかないだろう。私は殺したくないから百均で買った虫取り網を持っている(というか、蚊よりも大きな昆虫は、怖くて、気持ち悪くて、殺せないのだ)。

 ゴキブリもダメだ。大人しくこっちの指図に従うことなどまず無い。出口はこっちだと言っても全く聞きやしない。それだからどの家庭でも殺される運命にあるのだ。もしも人の言葉が分かって、「出口はあっち!!」と言ったら「はい!! お邪魔しました!!」と言って出ていくゴキブリが居たのなら、それでも殺したいとまで言う人は少ないと思う。たいていの人は、出ていってくれるなら、来ないでくれるなら、それで十分だ、と言うだろう。

 そんなこんなで、蜘蛛というのは、見せかけにしてもコミュニケーションが成り立つと思わせてくれる、かわいい生き物であるなあ、と思ったりもする。まあ、蜘蛛も虫も苦手なのだけど……。