もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

フリーゲーム「ナルキッソス2」をプレイしました

片岡とも さんの「ナルキッソス2」をクリアしました。

 「ナルキッソス」と、前日譚の「ナルキッソス2」が同梱されています。

 人の死を扱ったゲームではありますが、いわゆる泣きゲーというよりは、考えさせられる、いろいろな人と感想を交わしたくなる物語ですね。じっくり読むのが好きなので私はハマりました。

 舞台は緩和医療病棟、要するに死を宣告された人が、なるべく苦痛の無いように治療を受ける場所。限られた人生のなかで、どうやって死ぬのか。どうやって生きるのか。それを自分で決めることにどんな意味があるのか。というお話だと思いました。

 以下、気になった点を列挙します。ばんばんネタバレしています。クリア後に読んだら、「的外れもはなはだしい!」などとツッコめて面白いかもしれませんが、クリア前に読むと楽しさが激減してしまいますのでご注意頂ければと思います。

 また、整理されたレビューではないので悪しからず。

 プレイ順は、ゲーム内の作者コメントでは時系列順に「2→1」が推奨されていますが、ゲームをDLしたページ(記事最初のリンク)の作者コメントでは「1→2→1」が推奨されています。

 私のプレイ順は「1(声あり)→2(声あり)→2(声なし)→1(声なし)→エピローグ」です。最初はシリーズ順に、次に声なしで時系列順。正解だったと思います。しいて言えば、声なしが先の方が良かったかも。

  この物語に関しては、いろいろ考えさせられるポイントがあると思います。私の気になったポイントを勝手に列挙し、私の考えを書いてみます。

優はなぜセツミを連れ出そうと思ったのか

 まず最初の問題は、1の主人公の優はなぜセツミを連れ出そうと思ったのかということです。物語上これがなければ淡路島に行くことも無かったわけで、結構大きなポイントだと思います。セツミは「7Fも家も嫌」と言っていました(この意味も考えるところですね)。優自身は7Fか家かを決めかねていましたが、そんなセツミを引っ張って病棟から逃げ出します。

 これ、なぜだろうかと考えるのですが、優自身も父親の車のキーをつかんだ理由は「分からない」。セツミと同じような気持ちを、知らないうちに感じ取っていたのかな、と思いました。

 病気になり、いろいろな物事をあきらめるしかない人生。やがて自分を守るために、望むことをやめた。そんなセツミがどんな気持ちで7Fと家を拒んだのか。主人公は、セツミが長年向き合ってきた不安を、漠然と感じたのかな、と。

 とにかくこれは考えさせられるポイントでした。 重要なポイント、だいたい「分からない」で回答を回避されているのですよね。

「一つくらい…好きにさせてよ…」

 セツミの気持ちが一番よく伝わってくるセリフだと思いました。まるでエコーのように、自分の願いを言葉にすることも許されず、望みを捨て、諦めつづけることで自分を守ってきたセツミ。 

「…前向きになんて、なれるわけないじゃないの…」
「憧れて、懸命になって、頑張って、いつか報われるのなら良いけど…」
「でも、叶わなかった時にはどうすればいいの?」
「その時に、無理だったねって、笑って言えるほど、強くないわよ…」

 明らかに作者自身の言葉だと思います。

 何も言えないエコーはナルシスに呪いをかけて消えていった。では、セツミはどうだったのか。いろいろな考え方はあると思いますが、私は、セツミは入水することでエコーであることをやめたのではないかと思いました。エコーだったセツミが、最後に自分で自分の死を選びとったこと。2で「祈りがあれば呪いもある、けれど私はどちらも選べない気がする」と言う旨の発言がありました。その通り全うしたんだなと。それは自殺というよりも、セツミ自身が、自分の人生を生き抜くための選択だったのではないでしょうか。

 こう書くと自殺を肯定するようにとれますが、まったく違います。問題は、そのように、生き抜くために死ぬ人の死を、周りが止められるのかという話です。1の優と、2で姫子を止めるセツミは対照的だけれど、この答えがNOである点では一致していると思います。

 2でのセツミは、姫子を止めたかったけれど、止める理由を持たなかった。残される私がつらいからだと訴えかけたのですが、姫子自身の決意は止められないと。1で優がセツミを止めなかったのも、同じメッセージだと思います。

 ただ、優の振る舞いは2のセツミ以上にエコー的だなと感じます。あるいは2でセツミが「私には…まだ無理だよ…(意)」と言ったアロアでしょうか。2でのセツミは、止めるべきか、背中を押すべきか、葛藤し、迷っていました。けれど優は「止めてほしいのか?」と言いつつ、止めてはいないですね。

 「だってあなたは、まだ選べるんだからさ」

 2は、選ぶ前のセツミが選ぶに至るまでの話ですね。1で不思議だったことがこの姫子という人の影響だったことが分かります。大まかに言って、話は姫子と少女、セツミと姫子の話として展開してゆきますが、それぞれ同じアイテムが登場するのが印象的でした。”パイナップルの木”、花壇、アイス、ロザリオなどです。

 姫子は、ホスピス看護師時代に担当した一人の女の子を見送ったアロアであり、また自らも見送られるネロになった。そしておそらくアロアにセツミを選び、「魔法」をかけた。この「魔法」とはなにか、というのも一つのポイントですね。姫子が看取る者として最期にセツミ(コロッケ博士)を選んだ理由。半分は祈りの証人にするため。もう半分は「魔法」のため。

 いろいろ書きたいことはありますが、なんだか整理できないので省略。たとえば、ユーノスを「受け取ってはいけないように思えた」のはなぜか、これも一つ考えたポイントでした。

エピローグ

…そして…花言葉は自己愛…
だが、本当にそうだったのだろうか…

  最初に1をやり、2をやってからそれを念頭に置いて1をやると、また考えさせられるものがありますね。少女→姫子→セツミ→優のあいだに、それぞれ受け継がれてきたものが見えてきます。生きた証は、人から人へ受け継がれてゆく。

 セツミは他者のために祈ることのできないナルシスだったのか。ナルシスを呪ったエコーだったのか。あるいは ……。

 そして全ては、これに尽きる。

「さあ、どっちなんだろうね…」
「あはは、よくわからないね」

 

…眩しかった日のこと、そんな冬の日のこと…

 

 整理不足で書き足りないことだらけですが、面白かったです! またちゃんと感想書きたいな(^^;)