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もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

春夏秋冬

 小学1年生のときだった。担任の先生が風邪で休んでいて、時限ごとにほかの学級から先生が入れ替わりでやってきた。その時限は3年を担当している先生が来ていた。何の科目だったのかはさっぱり覚えていないけれど、上級生を担当している先生というのはそれだけ偉いのだろうと思っていた。

 そのころ僕はいち早く進級したいと思っていたので、授業が終わるとその先生についていった。その先生の教室とは僕の教室はちょうど校舎の端と端にあった。先生の教室へ行くには僕の教室から出て一番奥にある廊下の階段を上らないといけなかった。けれど、先生を追いかけているあいだに3年生の教室に来ていた。

 教室には先生と僕以外は誰もいなかった。音楽などで移動していたのだろう。誰もいなかったから、僕は迷わずに言ったと思う。「先生、僕を3年生に入れてください」と。本気だった。早く大人になりたかった。

 今思えば、先生は自分を追いかけて教室まで着いてきたしつこい1年生に苦笑いしていたかもしれない。しかし悪気があるわけではないから追い返すわけにもいかなかったのだと思う。「すぐになれるよ」などと言ってなんとか説得しようとされていたが、僕はそんなことは知らないから、その説得に一切耳を貸さなかった。

 とうとう先生はこう切り出した。

「じゃあ、この言葉が読めたら3年生に入れてあげる。でも、読めなかったらだめだ」

 そういって黒板に書いたのは、

”春夏秋冬”

 しめたと思った。迷わずに「はるなつあきふゆ!」と答えた。

 先生は「ははは、違うよ。これはね、こう読むんだ」と言って、字の横に「しゅんかしゅうとう」と書いた。

 そうだったのか、と思う半面、とても悔しかった。

 その出来事があってから数年、僕が小学校を卒業しないうちにその先生は亡くなった。担当される学年がまったく違ったから、病気で休んでいるらしいとしか聞いていなかった。ついに担任してもらうことはなかったけれど、小学校でもっともお世話になった先生として、今でも覚えている。