もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

サンマルクカフェで待ちながら

 例えば、私はいまサンマルクカフェに居る。入り口には代名詞とも言えるチョコ入りのクロワッサンがあり、ホワイトチョコの何とかだとか、ずらりとその他のパンが並んでいる。これらのパンはこの店の店長が奥さんと喧嘩したときの腹いせに殴りつけながら焼き上げた美味しいパンであるかもしれない。レジを待つ長蛇の列は、先頭が見えないほどに果てしなく続いており、一人ひとりが思い思いに待ち時間を過ごしている。私はスマホをいじったり、本を開いてみたり、何を注文しようかと夢想してみたり、ついには前後の人と何気ない会話を重ねてみたり、ずびびとわざとらしく音を立てて鼻をすすってみたり、虚空に向かって叫んでみたり、寝転がってみたり、風呂に入ってみたり、歯を磨いて床に就いてみたりもした。それでも、列は一向に進まなかった。周りの人間は、ひたすらにスマートフォンを見ているから、私のことなど気にならないようだった。店の中に入る自然光はしだいにやわらかくなり、ふっと、暗闇が訪れた。隣にいた男が、コーヒーをずずずっと啜った。その瞬間、私のイライラは頂点に達した。目の前にあったサンマルクホットサンドハムチーズの山を蹴飛ばし、電子レンジに目一杯押し込めてまとめてチンしてやった。それから客を小馬鹿にするように天井からだらしなくぶら下がったメニュー表を渾身の力でもってバリバリとはがし、頭から振りかぶって地面に叩きつけ、チョコレートを砕くように何度も何度も踏みつけた。ふと気がつくと、目の前の女店員が、心底関心がないという様子で「ご注文はいかがいたしましょうか?」と言った。