もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

映画「ボレロ 永遠の旋律」

8月14日(水)

 17時に仕事が終わって、ふと、気になっていた映画「ボレロ 永遠の旋律」が見れないかと思って調べたら、ちょうどチケットが安い日だった。何たる幸運、「映画館へ行くしかない!」と思った。

 この作品をみたかった理由はただ一つで、ラヴェルが後半生を過ごしたというモンフォール=ラモーリーのベルヴェデールが見たかった。唯一の弟子ペルルミュテールが「彼の創作に必要な静寂がそこにはあった(うろ覚え)」と語ったあの家に、(俳優なのだけど)ラヴェルが居る光景が見たかった!

 ストーリーは正直興味がなくて、第一次世界大戦の記憶、ボレロを生み出すまでの苦悩、機械から着想を得たというエピソードや、ボレロに官能性を見出すイダと決して認めないラヴェルの対立、ミシアとの関係など、実際どうだったのか、どれくらい影響したのかは決して分からない。けれど、そういう想像も面白いなと思う。

 冒頭からさまざまにアレンジされた「ボレロ」が断片的に登場する(じつはエンディングの「15分に一度、世界のどこかでボレロが演奏されている」というメッセージに対応している)。そこから私たちは、ボレロを巡るラヴェルの人生の旅に入りこんでゆく。

 舞踏会の場面でショパンハ短調ノクターン (op.48-1) や遺作のイ短調のワルツを選んだのは何故だろう? 舞踏会とは程遠いシリアスな作品だが……ラヴェルの心中を表している?(でも思わぬところでショパンが聴けて嬉しい)

 あとは弦楽四重奏曲など大好きな作品がたくさん出てきて嬉しかったなぁ。エンディングのピアノ協奏曲の2楽章を聴きながら、「やっぱりラヴェルはいいな!!」と大興奮した(たいていどの作曲家にも同じことを言っている)。でも、やはり雨のガラス窓と言ったらオンディーヌを持ってきてほしかった、というのはベタすぎてダメなのかしら。

 最後は、脳手術により昏睡状態となったラヴェルの夢とボレロの最後が重なって終わる。あの有名な最後。pppから始まった音楽はfffに至り、タムタム(ドラ)も入って大荒れに大荒れ、エネルギーを爆発させて一気に暗転する。

 ともあれ、末席の末席にせよ1人のラヴェルファンとしては、ラヴェルを取り上げくれてありがとうという感謝の念しかなかった。