もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

卒業

 よく行くカフェも卒業シーズン。社会人になる子たちは今月でいなくなってしまうので、挨拶でもないけれど、顔を覗こうと思って、普段は行かない夕方に行ってみた。

 そうしたら、ずいぶん見ていなかった男の子が居た。聞くと、彼は一ヶ月ほど前から来なくなっていて、今日は顔を出しに来たのだという。最後に挨拶出来たのは運が良かった。記念にと写真も撮ってくれたのだが、もらうのを忘れてしまった。

 思えば2年ほどになる。それは客と店員という限りなく薄い関係で、あえてプライベートのことを聞くようなこともなかった。それでも、週一日以上は顔を合わせていたから、私は当然彼の顔を認識していたし、あちらでも私の注文を覚えてくれていた。

 彼は冷え込んでいる日だというのに額に汗をかいて、別れの挨拶にも涙ぐんでいた。私もまた感極まって、「あなたたちみたいに、周りの人たちに活力を与える人の存在が、これからの世の中には大切だと思う」などと、あまりにもおっさん臭すぎるカビの生えた説教をしてしまったと、いま猛烈に反省している。若者への説教はだめだと、かの高田純次も言っているではないか。恥ずかしい!

 けれど、本心からそう思っているのも事実だ。世の中には、心を擦り減らし、鈍麻しきった大人が大勢いる。余裕なく、自分が自分がという人も多い。そんな世の中に新しい風をもたらす人たちが今、社会に飛び出したのだと、私はなんとも嬉しくなった。