もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

モスバーガーのクラフトコーラ

 モスバーガーのクラフトコーラを飲んだ。一般向けの生やさしいコカ・コーラとは違って、薬臭い本格的なコーラだ。これこそがコーラだと言う人もいるだろうが、間違いなく好き嫌いの分かれる味ではある。

 正直に言えば、私もあの独特の風味が嫌いだったのだ。あまりにも刺激が強すぎる。だから、私はこのクラフトコーラに対しても「ああ、薬臭いコーラか」と、最初はがっかりした。

 ところが、これをポテトやハンバーガーと組み合わせると一気に化けたのには驚いた。あの薬臭さがむしろ鮮烈に感じられる。油っぽさを押し流して、しかも嫌味なく爽やかな後味だけが残る。毒を以て毒を制すというわけではないが、あの薬臭さが組み合わせによってこれほど魅力的なものに化けるとは全く思わなかった。

 この体験に感動する一方で、私はそれがなんだか教訓めいているようにも感じられた。嫌いなものと好きなものを合わせると、天秤が「好き」に傾くことがあるのだ。最初にマイナスの印象を抱いたとしても、その「マイナス」が、組み合わせによっては唯一無二の価値を持つこともあるということだ。マイナスとプラスを組み合わせると、プラスとプラス以上になることがある。

 もちろんプラスとプラスを組み合わせても、例えばハンバーグと刺身をぐちゃぐちゃに混ぜたらまずいのは当たり前だが、ハンバーガーとオレンジジュースでは明らかにマイナスになる理由はない。けれども、ハンバーガーとクラフトコーラは、少なくとも私にとってはプラスと(かなりの)マイナスだった。しかしそれを組み合わせると、それはオレンジジュース以上のプラスになった。単体では強すぎるクセが、ハンバーガーに新しい味をもたらす魅力となるのだ。

 見方を変えれば、このクラフトコーラはポテトとハンバーガーによって完成する、というのが私の考えだ。薬臭さを苦手とする人がこの感動を得るためにわざわざクラフトコーラを頼む必要はないが、もし苦手な人があえてこのクラフトコーラに挑むなら、必ずハンバーガーとポテトをつけることをおすすめしたい。

 もちろんクラフトコーラ単体で好む人もいるに違いないが、私のなかでは、ポテトとハンバーガーの重さがクラフトコーラの刺激が組み合わさることで、全体として別々ではありえないうま味が完成されるのだと確信している。ジューシーな油のうま味と、爽やかな後味と、両者がそれぞれの個性を保持しながら、お互いの良い部分だけが残って、悪い部分は見事に打ち消される。願わくば、夫婦というのもこうありたいものだ…………などと感傷的に思わないでもない。

 こんなことを考えて、この組み合わせの素晴らしさに一人感動しながら、私は照り焼きチキンバーガーを貪っていた。