もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

お金もないのにグリーン席に乗る

 最近JRに乗るときは、お金もないのにグリーン席ばかり乗っている。それまでは高いと思っていたから乗ることなど無かったのだが、コロナ禍によって、他人と密接せずに乗車できるということに相当な価値を感じるようになったのだ。

 もともと人混みは苦手だったが、最近はますます拍車がかかり、ついに人混みにいるだけで精神的に絶えず不安を感じるまでになってしまった(正確には、不安を感じるというより、安心できない状態、と言ったほうが当てはまる)。しかも、その気持ちは和らぐどころか日に日に強まるばかりである。

 グリーン席は、たかだか大崎から池袋程度(二十分くらい)でも八百円程度の追加料金を支払わなければならない。遠距離ならともかく、普段乗るような距離では通常運賃の何倍にもなる計算だ。だが、今ではそれを高いと思わないほどに、満員電車に乗ることの不安が増大している。そして、相対的に、グリーン席に乗ることで得られる安心感が大きくなっている。社会の状況が変わり、満員電車に対する意味付けが変わったのだ。価格は変わらず(たぶん)、グリーン席のサービスも変わらないのに、その価格とサービスに対する私の価値判断が変わったのだ。これがなんとも面白いことだと思う。

 ただ難点は、この在来線のグリーン席は自由席なので座れない可能性があるということ、そしてもう一つは、酒臭い「おっさん」なる生き物が乗ってくる可能性があることだ。おっさん(中年男性のうち、何処に居ても嫌われる特徴をコンプリートして併せ持つ愉快な生き物のこと)という生き物についてはまた別に書くとして、自由席というのは中々怖い。座ったときは自分ひとりなのに、駅につくたびに乗ってきて、降りるころには満席ということも珍しくない。座れなくてもグリーン席料金はとられる。今のところは座れなかったことはないし、座席が埋まってきて隣に誰かが座ることもなかったが、次第にグリーン席の魅力に気づき始める人が増えるのではないか……と考えて、勝手にそわそわしている。