もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「話しかけるなオーラ」

 家電量販店で「話しかけるなオーラ」を出すのは私だけだろうか?

 「話しかけるな」とは言っても、店員を睨んだりするわけではない。店員と目を合わせない*1とか、話しかけられそうになったら他の商品を見るフリをして静かに距離を取るとか、その程度のことである。

 何故話しかけられたくないかというと、私の場合は本当に商品を見に来ているだけで、静かに商品を見たいからだ。また店員にとっても、いくら説明をしても結局買わないのだから、こんな奴の相手をするのは時間の無駄である。つまりこれは、店員と私双方のための意思表示なのだ。

 にもかかわらず、この意思表示の結界に踏み込んでくる勇敢な店員もいる。

 

 「何かお探しですか?」

 「いえ、見ているだけですので(買う気は無いので時間の無駄ですよ)」

 

 とは最後通牒で、このとき私は鯉口を切って、じりじりと間合いをとりながら構えている。これで店員が「ごゆっくりお探しください」と剣を納めれば平和であるが、

 「お買い替えですか?」と斬り掛かって来たら開戦である。話を進めてきたからには仕方がない。あなたの知識を利用させて頂くぞ、と息巻いて刀を抜く。

 こうなるとあとは延々質問攻めだから、大抵は店員が「こいつはダメだ」と匙を投げて「もういいですか」オーラを出してくる。リアクションを小さく短くして、話も返答を短くして打ち切ろうとしてくる。こうなったらこちらも潔く「大変勉強になりました。ありがとうございました」と言っておしまいとなる。

 実際の例だと先日パソコンを見に行ったときがそうだった。「見ているだけですので(話しかけないでくれ、の意)」と断ったのに、踏み込んできた。それで、CPUの性能の差だとか、日本製メーカーがこんなに高いのは何故かとか、このパソコンのスペックでもっと小さい画面サイズだったらどうかとか、この価格帯だったらどうか、画面がどうだメモリの性能がどうだと、30分ほど気になっていたことを尋ねてさんざん比較して案内させたあげくに買わないという最悪の客(客ですらない)を演じてしまった。

 しかし、ネットショッピングばかりしている私にとっては新鮮な体験でもあった。単に実物と価格を見にきただけなのだが、店頭も思った以上に嬉しい買い物が出来る……事もあるのだと思った。

 だから、最近は店頭でまったく買わないというわけでもない。むしろネットショッピングのデメリットを感じる出来事もあって、すこし店頭寄りに戻ってきた感じである。

 ネットショッピングの残念な点もあれば、店頭のよさもある。価格を交渉できるのもそうだし、入荷未定のまま振り込む不安もなく、商品をその場で受け取れるのもそうだろう。各分野のスペシャリストに質問できるのも大きい。ネット検索が具体的で個別的な知識を与えるのに対して、プロの人間は抽象的な問いに対しても様々な知識を連関させていくつもの解答を示してくれる。これが大きい(売り込もうとしてか、単なる知識不足か、誤魔化した説明をする残念な店員も、残念ながら居るが……)。

 ともあれ、「話しかけるなオーラ」を出しながらも、こういう駆け引きは案外楽しくない訳でもないなと思っているところである。

*1:ポケモンで主人公を待ち構える敵トレーナーと同じで、目が合ったが最後、エンカウントである。