もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「ランウェイで笑って」

 2020年冬期は心身ともに余裕もなく、ぼんやり楽しめる軽い作品が中心になった。グッと来たのは「ランウェイで笑って」。低身長という致命的なハンデ*1を抱えながらパリコレモデルを志す女の子と、ファッションデザイナーを目指す男の子の話。

 最初、一話を見て驚いた。内容がゴリゴリの少年マンガなのだ。「勝利」は分からないけど(無理やり当てはめることはできる)、「努力」と「友情」、そして「戦い」がある。モデルを目指す千雪とデザイナーを目指す育人の敵は、モデルとして身長が足りないという現実であり、家族を養わなければならないという現実でもある。

 ファッションが題材ということで少女マンガ原作だと思い込んでいて、少女マンガとファッションの組み合わせから想像したのは、きらびやかな衣装で彩られたシンデレラストーリーの類いだった。ところが一話を見てみればこのゴリゴリの物語。これには驚いた。ふわふわだったのは私の想像力だった。

 思えば、「基本的な要素の欠落した主人公」と言うので、最近みた「僕のヒーローアカデミア」を想像した。ヒーローに不可欠な個性を持たない主人公と、モデルにとって不可欠な身長が足りない主人公。どちらも逆境を跳ね返してゆくわけで、敵は強いほど盛り上がってくる、というものではある。ただこの敵というのが分かりやすい敵ではなくて、よりリアルな試練であるというところがこの物語の面白いところだと思う(そもそもファッションの物語で打倒すべき悪というのは想定しづらいのだけど)。

 自分が一番盛り上がったのは、芸華祭の一次予選あたりだったと思う。発想力を見せたけれど、困窮して安価な生地を使用したことを指摘され、感情を爆発させた場面が印象に残った。

 ただ、最終回については育人がどうなるのか気になるところで終わってしまった感じはした。結果についても、これはドラゴンボール的な見方に慣れきった人間の悪い癖と言うか、戦闘力でランク付けしたくなってしまう。モデルとしてやってきた心が、デザイナー一本で打ち込んできた育人を上回るのか、そして本選で頂点を立つまでになるのか。千雪とのタッグだったとはいえ、どうか。やはりこれは見返して、あるいは原作に当たってまた考えてみたい。

 ともあれ今期一番楽しみにしていた作品だったと思う。

*1:少なくとも物語のなかではそういう価値観にある。