もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

カツ丼

 カツ丼を見ると、中学校の遠足(?)のことを思い出す。鎌倉に行った。スキー用の手袋をしていったのに、指先までしびれるほど寒かった。北鎌倉駅から隧道を通り、建長寺へ行ったと思う。それから鶴岡八幡宮へ行き、江ノ電高徳院の大仏を見に行った。このあたりはもう覚えていない。というか、もう班の仲間が誰だったかすら覚えていない。

 ただ高徳院の駅のそばでカツ丼を食べたのははっきり覚えている。店主のおじいさんがひとりで注文をとっていた。そのお店には鎌倉丼といういかにも観光客向けのメニューもあってそれを頼んでいた子も多かったのに、なぜかわたしはカツ丼を頼んだ。体の芯まで冷え切っていたので、特別美味しく感じた。

 わたしは根っからの貧乏性で、わずかなおかずでご飯を食べる習性が身についてしまっている。カツ丼を頼むと必ずカツが三切れ四切れと余る。ヒレカツなら2つくらい余る。だけどそのときだけはカツは余らなかった。

 それから何度も鎌倉を訪れた。遠足のつぎに訪れたのは高校生のときで、当時行けなかった建長寺裏のハイキングコースを歩き、鎌倉文学館などを訪れた。そのときはカツ丼の店のことなどすっかり忘れていたのだけど、25歳くらいになってふと思い出した。あの頃から10年が経っていた。縁結びで知られるらしい葛原岡神社などひとけの少ない山道を歩き続け、山の方から高徳院へおりていったのだが、カツ丼の店は無くなっていた。かわりに見慣れない横文字っぽいオシャレスイーツのお店やらアクセサリーの店やら(?)が出来ていた。けれど土産物屋と大仏だけは相変わらず存在感を示していて、なぜか安心した。