もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

アニメ「ドメスティックな彼女」

 自省は大切だ、と思わぬところで教わった。映画やドラマ、アニメを見ていると「こいつバカだなあ(汚い言葉で失礼)」と思う瞬間があるけれど、そこで思考を切り捨てないで、「じゃあ視聴者であるこの自分はどうなのか?」と考えてみると、さらに物語は面白くなる。

 「ドメスティックな彼女」というアニメを、わたしは最初ただの昼ドラだと思ってバカにしていた。高校生の主人公が密かに思いを寄せていた先生と、ひょんなことから一度限りの関係をつくった女子高生が姉妹で、父親の再婚を機に姉妹とひとつ屋根の下で暮らすことになった、という荒唐無稽な前提はさておく。その姉妹の二人はもちろん、他の女の子たちもひょんなイベントによって主人公に好意を寄せているという、主人公補正もどうでもいい。

 問題は、主人公の愚かさだ。自分が好きだった先生(姉)には恋人がいて、しかもその人は不倫恋愛だった。そこで主人公は妹とともに浮気相手の男を問い詰める。この浮気相手の対応がまあ酷いのだけれど、ともかく、主人公は「浮気なんてなに考えてるんだ!」と浮気相手を責める。それは先生を”アイツ”の手から取り返したいという気持ちであったり、浮気は許されないという正義感でもあっただろう。

 それから数話進むと話がなんだか変になってきて、主人公は先生が好きなのだけど、その妹(最初に関係を作っている)やら他の女の子やらにも気を引かれ、そのあいだをさまよいながら姉妹の両方ともそれなりの関係に進んでしまう。視聴者からすれば「いやいや、キミ数話前であんなに浮気を糾弾してたやないかい!」というお話だろう。男目線で見ても、女目線で見ても肯定しようがない。彼は自分の行いを顧みて、自己嫌悪に陥るのだろうか。

 正直こうした展開自体は「あぁ、よくあるドロドロだなー」と感じるしあまり興味がない(いや、そこを楽しむアニメだと思うのですが)。むしろ主人公の「こうあるべき」という理想に対する若さゆえの妄信、そしてその理想とは裏腹に自分が手を汚してしまうという現実、この落差がとても人間らしいと感じた。とはいえ、人間らしいからと言って、こんな他人を侮辱するような行動はとうてい共感できないのだけど。自分の言動と行動がどうか、という自省を欠くと、自分の知らないうちに最低な行動をとってしまうものなのかもしれない……と恐ろしくなった。