もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「近くにきたらお立ち寄りください」

 「近くにきたらお立ち寄りください」と言われた。この言葉はとても苦手だ。と言うか、社交辞令が苦手なのだけど、これはその一種。

 例えば、仕事関係で「自分はここ(事業所)にいるので、近くに来たらお立ち寄りください」などと連絡がくる。裏を返せば、そういう連絡がくるくらいに組織的に遠い関係にあるということでもある(近い人間であれば行先など知っている)。

 にもかかわらず、なぜそのような情報をわたしに伝えるのか。別の用件のついでであれば分からなくもないが、それでもわざわざ自分の異動先をほとんど知らないような相手に伝える意味は、社交的にもない。

  となると、これは本当に折あれば訪問すべきなのではないか、という疑問が生じる。これが悩ましい。相手がもう一歩踏み込んで、「社交辞令ではないです」くらい書いておいてくれればこちらも遠慮なく境界を踏み越えて行けるのに。

 たいていの人は、こんなものは真に受けずに、社交辞令としてさらっと流すのかもしれない。実際に立ち寄る方向でアクションを起こすことにはリスクがある。けれど反対に、立ち寄ったほうがいい可能性もわずかにある。

 さらに面倒くさいのは、これが対面での発言でないことだ。面と向かい合っているのであれば、「ほんとうに寄りますよ? いいんですか?」と聞けば済む話だ。「えっ」などと、「(えっ、これ社交辞令なのに、そんなことも分からないの……?)」的なオーラを出されたことは一度もない。幸か不幸か、そんな面倒くさいコミュニケーションのかたちをとる社会人には遭遇せずに済んできた(実在するのだろうか?)。しかし、メールなどではそれができない。文書のほうが礼儀も問われるので、会話が苦手で手紙の方が好きなわたしもこういうときは難儀する。

 社交辞令を知らない子どものわたしからすれば、まったく戸惑うしかない事例ではある。