もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

まずいのに並んでいる鯛焼き屋

 美味くもない鯛焼き屋に、しょっちゅう行列ができている。何故だろう。

 この手の話をすると「行列の出来ている店を批判して、悦に入っているだけだろう」と言われかねないのだけど、そういう意図ではなくて、ただただ不思議なのだ。

 というのも、これほど並ぶ理由が分からなかったことはほとんどない。たいていの店は、自分の好みと合わなくても「これを美味しいと思う人もいるだろう」というように納得はできる。が、この店はそういうことが一切ない。ただただ、何が良くて並ぶのだろうか、と首をかしげてしまう。

 その店はデパートのなかにあって、2度買って食べてみた。が、正直に言って冷凍の鯛焼きのほうが美味しいと思うくらいだ。この鯛焼きはいわゆる量産型というやつで、大きなプレートで一度に何枚も焼き上げている。どこにでもある形で、むしろそこから差別化を図るために、生地をモチモチにしたりクロワッサンみたいにしたり、中身にチーズを入れたりお好み焼き風にしたり、とさまざまな工夫がなされることもある。が、この店はそういうわけでもない。ずっしりした生地と、なんだかパッとしない味のぼんやりした餡からなる、いたって普通の鯛焼きである。正直に言って、この店には特別に目を引くというものがない。しいて言えば、豊富な品ぞろえ、わるく言えば珍奇なメニューくらいか。

 もしかして、行列に釣られてわたしのようにお試しで買う人がほとんどなのだろうか。いや、いくらデパートで往来があるとはいえ、リピーターがつかなければやっていけないのではなかろうか。とすると、やはりそれを美味しいと思うリピーターが多いということなのか。いや、にしても明らかに美味しくないのだ。挑発的な問いかけとして受け取られかねないのだけど、そういう意図ではなく、ただただ不思議で仕方がない。

 美味いのに潰れる店もあれば、美味くないのになぜ潰れないのかが分からない店もある。多くの人が良いと評価するものは、ほんとうに「良い」のだろうか。そういうことをときどき考える。