もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

健康食品のCM

 健康食品のCMはツッコミどころが多いと思う。「個人の感想です」とか「いまなら半額です」とか「30分間だけオペレーターを増員してお待ちしております」とか、「掃除機をお買い上げの方に、いまなら膝サポーターがついてきます」とか、気になるポイントがいくつもちりばめられていて面白い。そのなかでも気になることがある。

 それは、わたしが「脅し」と呼んでいる方法で、健康食品はその方法が用いられる代表的な例である。つまり、脅して救いを与えるのだ。だから、まずは脅さなければならない。やれ体のナントカという成分が加齢とともに激減するだとか、病気になるリスクが激増するだとか、あらゆる手段を用いて中高年を脅しにかかる。そうして奇怪で聞いたこともない成分がそれを救ってくれる。そしてその健康食品にはその成分が何百倍にも凝縮されている。健康な人がそれを使用しているのだから、私も健康を維持できるに違いない。そう思わせたら勝ったも同然である。

 思えば、こういうやり方は健康食品に限ったことではない。例えば、わたしは「雑菌まみれのお部屋」を何度も見ている。カビ取りのCMだったろうか。一見して綺麗な風呂場であっても、そこには目に見えない雑菌が繁殖しきっている。グチャグチャと嫌な音を立てながらうごめく雑菌。わたしたちの生活はなんと気持ち悪い雑菌にまみれていることか。視聴者の不快感が爆発しようかというその瞬間、正体不明の液体が雑菌の群れを吹き飛ばす。なんという救世主。それほどに素晴らしいものなら、登場人物もその液体をかぶって「清潔」になったらどうか、と冗談を言いたくなる。

 「脅し」と問題提起は紙一重だと思う。どちらも「こんなことでお困りではありませんか」と親しげに語りかけてくる点は同じでも、そこに何となく胡散臭さがある。それは、はたから見る分には面白くもあるのだけど、商売として見るとなんとも不誠実なことだとわたしは思う。

 もちろん、それらが客観的に悪いと言いたいわけではない。単に私の気に入らないという、その程度のささやかな感想である。