もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

趣味は料理

 料理は楽しい。あるときには強火で一気に、あるときはじっくり弱火で、あるときは大胆に目分量で、あるときは正確に計量する。料理には、静の料理と動の料理があるのではないかと思う。

 例えば、一瞬でカタがつく料理は、アクション映画のバトルシーンのような緊張感がある。荒削りで力強い。殴りもすれば殴られもする。

 たとえばチャーハンがそう。煙が出るまで熱した中華鍋に、卵を入れたら時間との勝負。一気に卵を混ぜて、ご飯を入れる。火はもちろん強火。ご飯を潰すようにほぐしつつ卵と馴染ませてゆく。ネギ、チャーシューなど、炒めておいた具材を入れる。適当に味付けをととのえて完成。時間との勝負だから、集中力が研ぎ澄まされる。

 焼きそばもそう。麺はざるにあけて水で洗い、ほぐしておく(チンするだけでもいい)。煙が出るまで油を熱し、炒めておいた野菜と麺を入れたら時間との勝負。だし汁(希釈した白だしが簡単。水でもいい)と少量の酒を入れ、ウスターソースを入れる(付属の粉末を入れる場合は、この水に溶かすつもりで手際よく混ぜる)。まんべんなく混ざったら完成。すぐソースが焦げるので、手際よく仕上げる。

 それに対して、じっくり様子を見る料理は、西部劇の決闘とか時代劇の居合のような緊張感。静かだけどわずかな失敗が勝敗を分ける。おまけに繊細さが要求される。

 これはスイーツ全般がそうだと思うけど、キャラメルなどがとくにそう。生クリームやグラニュー糖、材料がシンプルなだけに計量から火の通し方まで油断が出来ない。一瞬でも混ぜるのを怠れば、せっかくのキャラメルは文字どおりあっという間に焦げ付いてしまう。

 パンケーキもそう。まずは正確な計量。そして生地にメレンゲを入れる際、混ぜすぎるとふわふわ感が損なわれてしまう。けれど混ぜないと焼くときにムラができてしまう。フライパンの温度を一定に保ち、焼いているあいだは最高に集中する。周辺のバターのようすや生地側面の火の通り方を、目と耳で注視する。ひっくり返すのは一度きりの勝負。

 天ぷらなどはその極致。揚げ具合を確かめるに音を聴き、泡の変化まで見る。とても神経を使う。

 よく「趣味はXです」というけれど、なぜそれが好きかと考えると、必ずしもXそのものが好きではないということに気が付く。自分はXのなかのなんらかの要素を好んでいる。「僕は料理が好きだ(上手くはないけど)」というとき、僕は料理そのものが好きなわけではない。料理をすることで集中力が高まる。このときの心がシャキッとした感じが好きなのだ。だから、放置しておけば大丈夫というような料理はあまり得意ではない。一瞬でカタをつけるか、じっとにらみ合うような料理。そこから得られる緊張と集中。これが楽しい。