もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

画面

(彼のヘルメットのうえに横長の小さなディスプレイが固定されていて、端末からメッセージを入力するとその画面に文字が表示される)

彼はその画面を通じて、自らの意思を世間に表示する。

彼の画面は語る。「豊洲で降ります」。

サラリーマンは彼のまえに乗り込んできたが、画面を見て彼の前から立ち去る。 新木場行きのこの列車で、豊洲などという果ての果てまで乗るなんて、なんて奴だ、という顔を浮かべてはいたが、彼が今まで幾度となく見てきた、「どこまで座る気だ、さっさと降りろ」というときの形相に比べたらはるかに穏やかな顔だった。

この画面のおかげで、彼は豊洲まで席に座り続けても睨まれずに済むようになった。便利なものだ。

遠くない未来には、念じるだけでこの画面に文字や画像などを表示できるようになるという。

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