もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「音楽用語のイタリア語」

06/10 : 森田 学「音楽用語のイタリア語」

音楽用語では、表面的な意味だけでは違いがよくわからない単語がたくさんあります。たとえば、accelerandoとstringendo(徐々に速く)、ritardandoとrallentandoとritenuto(徐々に遅く)、rinforzandoとsforzando(その音を強く)などといった言葉は、クラシック音楽では頻出するのにインターネットで調べてもなかなか出てきません。accelerandoとstringendoを「徐々に速く」と理解していてもなにか困るということはありませんが、これらをどう使い分けているのかというのは気になるところです。そこで、これらの単語をイタリア語としてとらえてみる必要があります。たとえば日常的に用いられるニュアンスを知るためには「これで納得!よくわかる音楽用語のはなし (Amazon)」などがありますが、その単語の由来や文法的な構成といった点から知ることができるのがこの本です。以下にいくつかメモしておきます。

徐々に速く

accelerando......ラテン語のceler「速い」に由来し、付加を表す接頭辞aが結合したもの。
stringendo......stringere「締め付ける、縮める、まとめる、切迫する」に由来する。

徐々に遅く

rallentando......動詞rallentare「(他)遅くする」「(自)速度を緩める」のジェルンディオrallentandoが名詞化したもの。 例:Rallenta! Non vedi il semaforo rosso? (スピード落として! 赤信号が見えないの?)
ritardando......他動詞ritardare「遅らせる、(速度を)遅くする」のジェルンディオが名詞化したもの。例:Antonella ha ritardato di nuovo alla lezione. (アントネッラはまたレッスンに遅れた)
ritenuto......他動詞ritenere「考える、見なす、引き止める、控除する」の過去分詞で「慎重な、控除された」という意味。音楽用語では、「慎重な、抑えられた」(から転じて?)「急に速度を緩めた」の意味。

その音を特に強く

rinforzando......他動詞rinforzare「強固にする、元気にさせる」のジェルンディオが名詞化したもの。強意のri-と-in-「内に」、-forza-「力」からなる単語。rafforzandoと同じ意味で用いられる。
sforzando......他動詞forzare「無理に力をかける」に、継続的な意味を表す接頭辞sがついたもの。他動詞sforzare「フル活動させる、強制する、侵略する」のジェルンディオが名詞化したもの。

とても遅いテンポで

largo......意味は「幅のある、広い、ゆったりとした」。ラテン語のlargus「気前のよい、豊富な」に由来する。
lento......意味は「遅い、のろい、緩んだ」。ラテン語のlentus「柔軟な」に由来する。相対的な速度としてpiù lento「より遅く」などと用いられることもある。

veloceとvivace

veloce......ラテン語のvelox (velocis)「速い、俊敏な」に由来する。
vivace......ラテン語のvivere「生きる」から派生したvivax (vivacis)「長寿の、元気な」に由来。
vivo......ラテン語のvivere「生きる」から派生したvivus「生きている、活発な」に由来。

marciaとmarziale

marcia......古高ドイツ語markôn「足跡を残す」、古フランス語のmarchier「踏みつける」から派生したイタリア語の自動詞marciare「行進する」に由来。
marziale......古代ローマの軍神Mars (Martis)「マルス神」から派生した形容詞martialisが語源。
どちらも行進という意味を含んでいますが、由来は違うようです。

*) もうちょっと見やすくしたい(^^;)