もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「卵のようにかろやかに」

04/23 : サティ「卵のようにかろやかに」

 私は批評家がいるとそれだけで目がくらみます。あまりの輝かしさに、一時間あまりも目を細めていなければなりません。私は彼のスリッパに口づけします。私は彼の言葉を脚つきの大きなグラスでうやうやしく飲み干します。 (p. 21)
 さまざまな場所で、粗悪な音楽がすばらしい音楽と優しい沈黙とにとってかわってしまっている。だが一般のひとたちにしてみれば、それでいいんだろう。贋物の美しきものを耳にすること。おかしなリトルネロを聴くこと。ビールのジョッキを手にしたり、ひとつカドリール舞踏でも踊ってみるかと、寝床でぼんやりしながら聴いているには、そんな粗悪品の音楽も結構なものにおもえるのだろう。(中略)さて、ところであなたは音楽を選びますか? それとも豚肉屋になることを選びますか? (p. 108)
音楽史のなかでも異彩を放つエリック・サティのエッセイ集です。講演に向けて書いた原稿、雑誌に掲載したエッセイと詩、戯曲作品がまとめられています。