もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「調べる論」「やし酒飲み」


01/13 : 木村俊介「『調べる』論――しつこさで壁を破った20人」

 しかしシベリアから帰ってきた後、どんなことがあったのか。それは伝わっていない。取材を進めると、実はこれがまだ終わっていない今の問題だということが分かってきた (栗原俊雄, pp. 40-41)
◆研究者や漫画家、弁護士やジャーナリスト、「正解のない現実と向き合う」さまざまな人たちは、どのようにして現実と向き合うことになったのか。そしてそこからなにを得たのか。刺激に満ちたインタビュー集です。

◆全体的に、一次情報にあたる大切さが強調されていました。ただそれだけでは当たり前のことなのですが、この本では、彼らが一次情報から引き出したもの、あるいは引き出した方法といった、過程のドラマに焦点が当てられています。足で調べまわることもあれば、じっとデータを見ていて、なにかの拍子にそのデータが意味するものがみえてくることもあるようです。そしてそうした発見によって、関係の無いように見えることが思わぬところで関連していることが分かったりして、通説と異なる現実の姿がみえてくるのですね。

◆この本は、さまざまな分野での調査の方法を説明するような本ではありません。むしろ調べる(答えのない問いを立て、答えを探す)人たちの人間的なドラマに関心がある方が楽しめる本だと思います。





01/13 : エイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」

◆乱暴に要約すると、やし酒を飲むことしか能のない町の有力者の息子が、亡くなったやし酒作りの名人を尋ねてはるかかなたの「死者の町」へ行くという冒険の物語です。◆ですがその世界に入ろうとすると、すべてが神秘的で衝撃的なのです。「なんだこれは」という驚きと、理解が追い付かない戸惑いを感じながら読み進めてゆくと、いつの間にか物語は終わっていて、ハッピーエンドなのか、そもそもエンドなのか何なのかもわからない、そんな不思議で面白い一冊でした。