カフェでおこなわれていた文学的な交流の一例として、「グリーンシュタイドル」のお話を少しだけメモしたいと思います。このカフェは1847年に生まれましたが、ウィーンが「大都会になるため」として1897年に取り壊されてしまったそうです。
グリーンシュタイドル
音楽家として知られるクライスラーは、あるときフーゴ・ヴォルフとともに「グリーンシュタイドル」というカフェに腰を下ろしていました。そのカフェの別の席には、こんにちオペレッタ「オペラの舞踏会」で知られる(ぼくは知りませんでしたが汗)ホイベルガーが、まさにそのオペレッタの曲をつくろうとして悩んでいました。オペラの監督から「ワルツにしてくれ」と頼まれていた「さあいま、ぼくといっしょに別室へ行こう」というテクスト(詩の一節)がワルツのリズムに合わないようなのです。
そこでホイベルガーは、その場にいたフーゴ・ヴォルフに助けを求めます。ヴォルフはその悩みをさらにホーフマンスタールに委ね、ホーフマンスタールは、そのテクストを「ぼくといっしょに別室へ行こう」というように縮めました。
さらにクライスラーは、できあがったテクストに、この歌曲の冒頭数小節を書きました。
ホイベルガーは、手助けをしてくれた彼らに、モカをおごり、大変感謝したといいます。
(クラウス・ティーレ=ドールマン「ヨーロッパのカフェ文化」, pp. 128-129. を勝手に要約)
ホイベルガーのオペレッタ「オペラの舞踏会」より第3幕「別室にて」