05/19:ハワード・シュルツ「スターバックス再生物語 つながりを育む経営」
◆スターバックスの実質的な(実際には違うけれども)創業者といってもよい著者が語るスターバックスの歴史。経済危機、営利主義によって、スターバックスの本質が失われようとしていた。そこで著者は、スターバックスのCEO(最高経営責任者)として復帰し、理念と現実のあいだで悪戦苦闘する。◆というと格好いいのだけど、423ページはすこしきついか。◆個人的におもしろいと思ったのは、 「第三の場(第四の場)」「スターバックス体験」という理念と、それらの理念と現実を折衷させてゆく解決方法です。いくつかメモしてみたいと思います。
サンドイッチの廃止
CEOを退いた著者(オーリン・スミス → ジム・ドナルド)。サンドイッチは人気だったが、中身のチーズなどがオーブンのなかに落ちて焼けると、焦げたにおいを発する。「イタリアのバールのロマンからこれほど遠いものはないのである」「サンドイッチの販売をやめてくれ! (pp. 55-56)」。→ のちに、においの少ない、オーブンを使わないサンドイッチを開発している
→ 経済環境の悪化に加えて、店内にコーヒーの香りがしないなどといった、スターバックスの本質を揺るがす危機。数字上の業績は良好。お客様の期待ではなく、ウォール街からの期待に応えている現状があった。2008年にCEO復帰
パイクプレイス® ロースト
2007年「コンシューマー・レポート」で行われたコーヒーの味のテストで、スターバックスがマクドナルドよりも低い評価を得る。日替わりにさまざまなコーヒーを提供するのではなく、一貫性のあるコーヒーを提供することと、本格さよりも飲みやすさのあるコーヒーを要求されていることが明らかになった。
2008年1月、ついにスターバックスの焙煎哲学を放棄することなく、より多くの人がブラックで、あるいは砂糖とミルクを入れて楽しむことができるコーヒーができた。バランスのとれた風味豊かなブレンドだ。このブレンドは、第一号店の名前をとってパイクプレイス・ローストと名づけられた (p. 114)。→ 「質の低いコーヒー」で勝負しない点に、スターバックスの哲学がある。
マストレーナ
マニュアルのエスプレッソマシンの品質と体験を提供しつつ、自動の機械のように効率的でパートナーの負担にならない、半自動のエスプレッソマシン。ラ・マルゾッコ(完全手動)→ベリシモ801(半手動)→マストレーナ。詳しい人は、このマシンがいい! というこだわりもある様子。バリスタは抽出や泡立てをこれまで以上に管理することができ、カウンターの向こうで待つお客様と目を合わせたり、言葉を交わしたりすることによって、ふたたびつながりをつくることができるようになった (p. 407)。
クローバー
クローバーはフレンチプレスとサイフォンを組み合わせたような機械で、極細に挽いた粉を、上から圧縮するのではなく、底から吸い込む。濾過には目の細かいフィルターが使われるので、最もおいしい油分が残されるのだ (p. 123)。スタバの店舗検索によると、日本では1024店舗中22店舗(2015年5月時点)にある。
ソルベット、ヴィア、マザグラン。面白いなあ(独り言)。