もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

「海の上のピアニスト(THE LEGEND OF 1900)」から「The Crisis」

海の上のピアニスト(THE LEGEND OF 1900)」から「The Crisis」


海の上のピアニスト」、ぼくは小説の方をよみました。映画をみない、小説も読まない、文化的教養にとぼしい僕の印象に残っている物語の一つです。ストーリーも考えるところがあるし、音楽も優しい曲が多くて美しいのが印象に残っています。

物語を一言でいえば、船の上で生まれ育ち、船とともに消えてゆく”超”天才ピアニストの物語。

あるとき、彼も一度だけ陸に上がろうとします。しかしタラップを降りる寸前、目の前に広がる陸の世界に何かを見つけた彼は立ち尽くし、やがて船のなかへ引き返してしまう。この物語の語り部である親友がなぜ降りなかったのかと尋ねると、「二度と船は降りない」という。船とともに生まれ育った、陸に上がったことのない彼が見た陸の世界とはなんだったのか・・・・・・。

「なぜ彼が船を降りられなかったのか」という問いは、この映画の重大な問いです。単純に「彼が弱かったから」と考えることもできますが、ぼくは反対に、普通の人びとはそれだけの膨大な選択肢に直面していないか、見て見ぬふりをしているということなのではないかと思います。それは、わたしたちの世界(彼のいう”陸の世界”、無限の鍵盤)と、彼自身の船の世界(88の鍵盤)の隔たりを示すと同時に、新しい世界に対峙した人だけが受ける衝撃なのではないかと思います。彼が人生を全うできないと気づいてしまった”わたしたちの世界”とは、いったいどんな世界なのでしょう?彼の視点に立つと、また違ったメッセージが見えてくる気がします。


映画紹介なんて恐れ多いことができるはずもなく、これ以上はネタバレになるのでこの辺で。