片方には物事を十分に説明しない語り手がいて、もう片方には少しでも曖昧な指示があると自分で判断することのできない聞き手がいるものとする。
説明不足の語り手
まず、この語り手の話法をつき進めて、桶屋話法とでもいうべきものを考えてみた。大げさに表現すればこのような感じになる。
「では、弊社を志望なさった理由をお聞かせいただけますか」
「はい、歯医者へ行くためです」
「では、もし弊社が採用しなかった場合は……?」
重要なのは、飛躍しすぎていて意味が分からない、一見して受け答えになっていないということ。もちろんこれは現実にありがちなことをきわめて大げさにした想像である。いわば自分の論理で勝手に話す人。実際に居たら厄介だけど、冗談としては面白そう。
指示待ちの聞き手
また他方では、曖昧な言葉を一切受けいれない聞き手がいる。
「こちら、よく焼いてお召し上がりください」
「”よく”って、どれくらい?」
「はい?」
「”よく”って、どれくらい?」
「中心温度が75度以上の状態を1分以上維持してください」
「はーい」
これは、「ちょっとそこまで」などと言われるのが許せない人。そういう人は多いかもしれないけれど、それをつき進めたらかなり厄介な感じになると思う。
このように、現実にありがちな人の特徴を取り出して、それを極端に、非現実的なまでに突き詰めてみるというのはどうだろう。そうすれば、日ごろ愚痴の題材にしている「嫌な奴」も面白く見えてくるかもしれない。