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もの知らず日記

積み重なる駄文、天にブーメラン

黒木奈々『未来のことは未来の私にまかせよう』

 黒木奈々さんの『未来のことは未来の私にまかせよう』を読みました。

 黒木奈々さんは、NHKのワールドウェーブトゥナイトを3年間、また国際報道2014、そして2015年が明けてからは国際報道2015でキャスターとして復帰なさっていました。本書は国際報道2014を休養し国際報道2015で復帰なさるまでの経緯を綴っています。

 がんが姿を現したのはあまりに突然でした。友人と久しぶりの再会を喜びあっていたとき、腹部に激痛が走ったそうです。そのまま倒れ救急車で搬送されたところ、胃がんであることを知らされたといいます。もしかしたら、日ごろの睡眠や食生活がよくなかったのかもしれない。あるいは、知らないうちに楽しいと思っていた仕事でストレスがかかっていたのかもしれない。それまでの自分の生き方は、自分の体を苦しめていたのかもしれない。がんになった直後、このように反省されています。

 この本で痛感するのは、やりたいことをこれから出来るという希望をがんが襲ったという事実です。幼少期からアナウンサーになることを志し、そのために努力を続けようやく手にしたチャンスを、胃がんが遠くへ持ち去ってしまったということ、どんなに葛藤なさったことだろうかと思います。命と仕事のどちらを取るかという問題があります。たとえば僕のような凡人であれば迷わず命を取ることが出来ます。では、もしその仕事が生涯をささげた夢だとしたらどうでしょうか。

 もちろん、周囲の家族や友人は、命を優先してくれと言いました。例えば、お兄さんは「仕事のことなんて俺にとってはどうでもいい。奈々が生きていてくれれば何でもいい。生きていれば何でもできるんだから」と言ったそうです。家族として、彼女にとって仕事がどれだけ大切かと言うことは十分に理解していて、なおそんなことはどうでもいいと断じる。この言葉に僕は、家族の思いの強さを感じます。

 冒頭の話に戻りますが、それまでまっしぐらに生きてきた彼女は、療養に入らなければならなくなったとき、自分の人生を見つめ直さざるを得ませんでした。そうして思い悩んでいた筆者に友人が与えてくれた言葉が、表題の「未来のことは未来の私にまかせよう」というものです。今の自分に出来ることを全力でやり遂げ、あとは未来の自分に託すということ。最優先は病気を治すことに他なりませんが、また今の自分はキャスターとして何が出来るかとも考えていたはずです。そう考えてたどり着いた答えの一つががんになった自分の闘病生活を本にするということだったのではないかと思います。

 本書は、多くの人にがんの恐ろしさや人生について考える大切さを教えてくれると思います。とくにおすすめしたいのは、働く女性、つまり仕事に専心なさっている女性です。それこそが筆者が本書に託した願いではないかと僕は考えています。

 そして僕は、このように生涯を全うした方が居たことを胸に刻み、今を生きてゆこうとひそかに決意をしました。

だから、もしも、私と同じように、働く女性ががんと突然告知されたら――
「未来のことは未来のアナタにまかせてください。今を一生懸命生きてください」と言いたい。そして、ひとりじゃないということ。一緒に闘ってくれる人は必ずいるということを信じてほしい。 (p. 223)

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